『砂漠で溺れるわけにはいかない』
“WHILE DROWNING IN THE DESERT”
ドン・ウィンズロウ 著
東江 一紀 訳
東京創元社
創元推理文庫
朋友会から労働能力を失ったと判断され退職したニールは、カレンとの結婚をひかえ幸せに暮らしていた。そこにグレアムからの電話が。またもや朋友会から仕事を依頼されてしまう。
今回の仕事は、ラスヴェガスへ家出した往年のコメディアン、ネイサンを連れ戻すこと。居場所は判明している上、監視もついている。老人に会うのは簡単だった。しかし、相手は一筋縄ではいかなかった。
ニールの手を逃れる老ネイサン。彼は何故ラスヴェガスへ行ったのか。何故帰ろうとしなかったのか。その裏には、保険会社を相手に訴訟を起こし、金を奪う悪党の姿があった。
饒舌でパワフルなネイサンと、子供を欲しがるカレンの間で振り回されるニール・ケアリーの苦労はまだまだ続く。
今回の話は、後日談的な作品であるということで、話の展開具合が前の4作に比べると小さめです。遠くの土地へ飛んだりもしなければ、巨大組織に立ち向かったりもしません。
しかし、ネイサンとカレンとホープがいい味出してます。今まで重要な役を担っていたエド・レヴァインやイーサン・キタリッジは名前が出てくるくらいで、グレアムもあまり登場しません。そしてニールも得意の探偵術を活かす舞台がなく、大の苦手の荒事で散々な目に。
まぁ、そこがいいんですけどね。このシリーズ、分類的にはハードボイルドになるのでしょうか。ハードボイルドというと主人公がタフで行動力があり…という印象がありますが、主人公の内面を描いているという意味ではハードボイルドの一種なのだと思います。もちろん、ニールは決めるところは決めるのでやっぱりかっこいいんですが。等身大のヒーローって感じがします。
あとがきを読むと、作者はこのシリーズを再開する予定があるとのことですが、今のところニール達の活躍も本書で読み納めです。翻訳は『ストリート・キッズ』から13年ほどかかって『砂漠で溺れるわけにはいかない』が出ていますが(原書はほぼ1年ペースで出てたようです)、読み始めたのが最近だったので間を置かず読めたのは幸せですね。でも、逆に13年間続きを悶々と待ちながらニール達につきあうっていうのも楽しそうな気がします。
兎にも角にも、シリーズ通してかなりオススメです。
テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌